映画「ルックバック」感想殴り書き

1. まえがき

 私は普段基本的にアニメ作品は見ないの。理由は特にないけど、何話も続くアニメを追うのがしんどかったり、最近のアニメ映画がほとんどハズレだったのが影響してるかもしれない。新海誠っぽい映画、ジブリっぽい映画まみれで差別化が一切されてない。そんな映画があまりに多すぎて嫌気がさしてる。

そんな中で、藤本タツキ先生が描いた読み切り「ルックバック」が映画化することになった。
原作を初めて読んだときのことは忘れない。下手ながら創作をして絵を描く私には思い切りぶっ刺さった衝撃作だったわ。何度も何度も読み返し、そのたびに泣いて、余韻に浸る。そんな経験をこの漫画は私に与えてくれた。

ただ、この作品は原作の時点で結構いろんな論争が生まれていて、アニメになるってだけでもいろんな意見が飛び交った印象がある。
私自身も、この映画を見に行った一番の理由は特典のネームが欲しかったからなんて邪な理由なのかしら

けど理由はほかにもあって、まぁこれは完全に私の個人的な状況なんだけど。

友人が自殺を企ててることを公開直前に知ったのよね。来年の三月に。

高校の時から仲良くしてる友人だし、その子のことはよくわかってるつもり。
だからこそ、止められないのがわかってる。
止めたところで多分本人を余計に傷つけてしまうだけだと思うから。
その子も絵を描くし、個展まで開いてる実力者。
知ったときは思いっきり一週間くらい病み散らかしたし、どうにか説得できないか考えた。
けどそれって結局は私のエゴであって、止める資格は私にはない。

このどうしようもない葛藤に終止符を打ちたい、遺された者がどう生きていけばいいのか、なぜ人は失っても前へ進めるのか。
その答えを絵だけではなく、声と音、動きが加わった新しい形で私にまた新しい衝撃として教えてくれるかもしれないという期待から見に行ったわ。

クソ重い話で草わよ。まぁとりあえずそれが一番の理由じゃなかったけど、そういう背景もあって、アニメ化にあんま肯定的じゃない私でも見に行ったわけね。

結果としては、ネームはもらえたし答えももらえたので大満足ね。
私の友人間でも賛否がかなり分かれている作品だけど、私は好きだと感じた。
原作と切り離してみることで、原作の良さとはまた違う映像作品としての良さを感じることができたわ。

原作の絵じゃない時点でこれは本物じゃない、という意見もわからないでもないわ。
けれども、漫画ってやっぱり一人の手でつくられたものではないわけで。原作に敬意を払っていることがわかる描写の丁寧さ、原作者ですら楽しみだと明言している事実がある時点で、私はこの作品の存在を否定できないし、するべきではないと思っている。個人の意見だからこれを押し付けるつもりは毛頭ないけれども。

あとタツキ先生のTwitterによればこの作品はほとんど監督が描いてるらしくて戦慄したわ。バケモンすぎない?

2. 原作にはなかった表現

 これはアニメの強みね。藤野が描いた四コマ漫画に、動きと声が加わった。この描写は素直に面白いと思った。原作の補完が過剰ではない程度に行われていて、藤野が頭の中で思い描いていた世界を直に感じることができたわ。

次に、ラストのほうとか、細かいところで原作になかったセリフ、場面があったこと。これも原作の補完として受け取ったわ。改変ではないわけ。原作では描かれなかった背景情報がスッと入ってくるのね。

共通してるのがあくまでも原作の補完であるということ。特典でもらったネームと原作を見比べると、登場人物の名前から髪型まで何もかもが違ったわけ。セリフの細かい言い回しも全く別物で、これがあの原作につながったの!?ってなるくらい別物だった。

創作をしてるとわかるけど、過去に作った設定を補完したり、いっそ作り直すことはかなり頻繁にあることなのよ。新しいキャラクターを作ったときにつけた設定が、過去に作った設定と関連付けれそう!ってなったら矛盾しないように設定を整え直したり、もともとあった設定の原型もはや残ってないやん。ってレベルに作り直したり…そういうことがものすごくたくさんある。

藤本タツキ先生と編集の林さんの対話でも、チェンソーマンの設定は初期に考えられていたものとはかなり違うんだなということが聞いて取れる。

で、この映画が付け加えた原作にない表現や描写は、本編の設定を一切邪魔しないものだったの。
むしろ背景情報がクリアになって、よりこちらに伝わってくる絶妙なラインだったのね。

藤野が漫画を一人で連載してるときに編集の人とアシスタントについて相談してるシーンが特にそれをあらわしてた。あれがあることで、藤野が京本というアシスタントを失ったことでどういう状況に置かれているかを容易に想像できるようになった。理想のアシスタントになかなか出会えないことによる苛立ちとか、多忙さがよくわかる。原作ではいきなり京本に関するニュースがセリフなしで飛び込んでくるんだけど、アニメという媒体で追加情報を持ち込んできたのは見事ね。

3. 終盤の演出

私が一番「よくぞやってくれました」と思ったのは、終盤のシーン。
藤野が京本の部屋で振り返って過去を回想するシーン。
あそこは原作だと、そこから一切セリフが入らない。私は、その演出を映像としてちゃんとやってくれるのかな?とちょっと不安に思ってた

あのシーンは、セリフがないからこそ際立つものだと思う。セリフはないけど、藤野が思い出の中から「なぜ描くのか」への答えを見つけ,それを読者に考えさせるような構図になっている。私はあのシーンを見返す度に大号泣していたわ。

そしてそれを、映像としてばっちり再現してくれたわけよ。とんでもないことね。私はとてもうれしかった。藤野がなぜ絵を描き続けたのか、タイトルの「ルックバック」とは何をあらわしていたのか、二人がどんな関係性だったのか。それを、何の解説もなく一気に視聴者に流し込んでくる。これは本当に、本当に映像化してくれた人に感謝するべき点だと思ったわ。

4. 最後に

この映画は、漫画を本当にそのまま動かしたような作品だったわ。原作への底知れないリスペクトと考察を積み重ねて作られた一つの芸術作品のように思えた。
人間なんだから必ず間違いや衝突、悲しいことを経験する。だけれども、そこに意味がないなんてことは絶対になくて、前へ進むための糧になることもある。悩みを多く抱えて行き詰ってる私に、ある種勇気をくれた素晴らしい作品だったと思うわ。

短めだったけど今回はここまで。